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インタビューのコツ

インタビュー取材をしているときに、僕はよくボケーッと黙ってしまう。こちらが喋ることを完全に放棄しているのだから、きっと相手が喋りだすに違いないという、プロのテクニックである。このテクニックが生まれるには時間がかかった。最初は理由もなくただボケーッと黙っていただけで終わらせていたのだが、「あ、これをテクニックだということにすればいい」と啓示が降りてきたのである。「テクニックはあとからついてくるものだ」という話をよく耳にするので、「これもたぶん、同じだろう」と考えたのだ。もちろん、プロなので、ただボケーッとしているわけではない。ぜんぜん関係ないことを考えてボケーッとしている。強靭な意志をもって、「このあと何を食べようか」「夜中にチャンピオンズリーグあるの楽しみだな」「あっ、俺、こんなところにホクロがあるんだあ」などと真剣に思考しつつ、相手の出方を待つ。すると相手が僕に対して何かを悟るのだろう、驚くほどスムーズに喋ってくれるのだ。おかげで取材も予定時間を大幅に短縮できる。ウィンウィンである。僕のような人間がビジネスマンになったら、さぞかし業績も一直線に下っていくことが期待できる。きっと迷いのない、美しい折れ線グラフが出来るだろう。その後、なぜか同じ人の取材を頼まれることは二度とないし、「あの人にまた会いたいなあ」と編集さんに言っても、なぜか気まずそうな表情を浮かべているだけなのだが、それはおそらく偶然だ。なにせ日本には1億人もの人間がいるのだ。確率的に一期一会なのも当然である。編集さんも元々が気まずそうな顔つきをしているだけに違いない。だが、キャリアがそこそこ長いくせに「芸能人の友達」なんてものがいっこうに出来ないのは、ひょっとしたら二回と取材できないのが原因かもしれない。もう一度会えば、僕にもウジャウジャ友達ができたろうに。残念だ。

とはいえ、ライターさんには「取材して、いっぺんで仲良くなったよ」という方もいる。「取材おわりに、飲みに行ったよ」などと言う。僕にはとても考えられないことだ。いったい、仕事というものを何だと考えているのか。そもそも芸能人というものは、ほとんどの場合取材終わりにはこちらを見て呆れた顔をしているか、もしくは「こんなんで記事になるのかな…」という疑惑の目を向けてくるのが普通である。とてもそれまでのことをすっかり忘れて「飲みにでも、行きますかぁ!」なんて言えるような雰囲気にはならない。僕の経験上、ほとんどの芸能人がそのタイプである、との統計が出ている。そんな相手と仲良くなるなんて、にわかには信じられない。一体、どんな裏技を使っているのか。

よく観察してみると、そういうライターさんは「面白い」が口癖だということに気づいた。相手の言うことに「それ面白い!」「面白いなあ…」と、まるで相槌のような頻度で合間に挟み込んでいくのである。なるほど、確かに、それだけ面白い面白いと何度も言われたら、話しているほうも気分が良い。「もっと喋りたい」と思うに違いない。そして、本当に面白そうな顔をしているのだろう。インタビューとは会話をするだけでなく、そんな相手の心のマッサージもしながら、本音をじわじわと引き出していく。そうして距離を縮めていくのだ。毎回、相手の話なんておかまいなし、もっと自分の未来とかを相談したい、もしくは「誰と誰が仲が悪い」といった芸能ゴシップ以外は興味がないという純粋な姿勢でインタビューにのぞんでいた自分には、まったく出てこない発想であった。18年近くライターをやっているが、いくつになっても日々勉強である。

僕も早速取り入れて、まずはプライベートで使ってみようと思った。飲み会で、相手のほぼすべての発言に「それは面白い!」「カーッ!やっぱ面白いっスね!」と相槌を打つ。できるだけ細かく挟み込んでみた。こういうものは質より量である。ドラムだって「オカズ」が多いほうが派手だし、グルーヴィーな効果が望めるだろう。会話も一種の音楽である。なるべく軽やかに、なるべくオーバーに、むしろ相手が喋る前から「面白いなあそれ!」と入れていく。しかし、相手は喜ぶどころか、黙ってこちらを睨みつけてくるだけだったのである。話が違うじゃないか。やはり、不慣れなことはやるべきではなかったのかもしれない。相手の話していた内容が深刻な離婚話で、そのストレスで病気になってしまったという悩み相談だったのだが、それはたぶん事の本質とは関係ないと思う。つくづく、会話というのは難しいものである。

 

※画像は、女優の広瀬すずさんが描いてくれた僕の似顔絵である。『Hanako FOR MEN』という雑誌で連載している、アイドルや女優さんのインタビュー連載で描いてもらったものだが、もはや話を訊くことすらアレで、似顔絵を(ムリヤリ)描いてもらっている。そうすると、こちらも喋らずに女優さんを見つめているだけでいい、ということに気づいたのだ。そして出来上がった、まるで青木雄二先生作品の登場人物のようなタッチの自分。最高だ。映画『海街Diary』を楽しみにしている。

 

 

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