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もうひとつのライオン殺し:Uncarina abbreviata

もうひとつの「ライオン殺し」、ウンカリーナの実。

触れる前に気がつくべきだった。あからさまに暴力的な鉤爪をこれでもかと突きつけてくるハルパゴフィツムやイビセラに比べて、パッとしない凡庸な姿への違和感に。触手のような突起をつまんだ瞬間、親指と人差し指が離れなくなった。顔を近づけてよく見てみると、その触手の先端には極小の鉤爪があり、指先の指紋の溝にガッチリと食い込んでいる。あわてて、もう片手で抜こうとまたも不用意に触れてしまったため、あっという間に両手がロックされた。小さな木の実に完全に動きを封じ込められてしまったのだ。

ちょうどそばで作業していた知人を呼び、くれぐれも先端の鉤爪に触れないよう根元を摘んで外してくれるよう頼む。慎重に根元を狙ってつまみ、鉤爪を外そうと指先を返したその時、別の突起の鉤爪が知人の指を捉えた。小さな実に成人男性2名、計3本の腕がロックされる非常事態。せっかくの貴重な実だが、これはもう突起をハサミで切断して緊急脱出するしかない、と、唯一残った知人の片手を使って突起を切り落とす作戦へ移行。しかし、利き手でない手しか残っておらず、ここでも作業は難航。小さな実に繋がれた2人はチェーンデスマッチ的な不自然な体勢となり、指先に余計な負荷がかかって、恐れていた最悪の事態が起こってしまう。ついに鉤爪が僕の指を切り裂いたのだ。ほとばしる鮮血。それでも、それが利き手だったのは幸いだった。切り裂かれたことで自由になった指でハサミを握り、確実に突起をカット。かくして"ライオン殺し"から開放された。

真に恐ろしいものほど、その力を誇示することなく、なんということのない姿でその凶気を包み隠す。たった5cm程度の木の実ながら、男性2人がかりでも素手ではかなわず、得物をつかって逃げ出すのが精一杯。ウンカリーナこそ、これまで対峙したなかで最凶の木の実だった。

ちなみに、指先の傷は、小さな鉤爪がひっかかった程度なので、血がじんわりとにじむ程度の軽いもの。けれど、大の男2人を血祭りにあげた最凶の実という"逸話"にしたてて、重宝させてもらってる。

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フリーランス編集者。 関東と関西の半々暮らし。

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ライオン殺し:Harpagophytum procumbens

そのいかにも頑強そうな鉤爪は"百獣の王"も引き裂くというハルパゴフィツムの実。

踏んでしまうとライオンの足すら貫き、噛みついて実を足から引き抜こうとすれば、今度はたちまち口の中が引き裂さかれる。口内の激痛に何も食べることができなくなったライオンは日に日に衰弱して、死ぬ。その骸のあとには、ハルパゴフィツムの勢いのある若々しいコロニーが現れるのだ。

と、この手の"逸話"は、ついつい身を乗り出してきいてしまうのだけど、常にライオンを殺して繁殖しているわけではもちろんない。なかにはそういう例もあった、という程度の話だ。前回紹介した「悪魔の実」も然り。おそらく、鋭い鉤爪は、動物の体毛などに絡みついて遠くへ運ばれるために進化したものだろう。

さて、じつは"ライオン殺し"の異名を持つ木の実は、もうひとつ存在する。これもまたおおげさな逸話にもとづいた異名なのだろう、と高をくくって不用意に触れてしまった結果、まんまと血祭りにあげられてしまった話は、また今度。

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フリーランス編集者。 関東と関西の半々暮らし。

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悪魔の実:Ibicella lutea

月の約半分を関西で暮らすようになってはや2年。西の良いところをきかれればいろいろあるけれど、なにかひとつあげるとすれば、それは「何度も通いたくなる植物園が多い」ということだと思う。

京都府立植物園、咲くやこの花館、手柄山温室植物園など、どこもオススメだけれど、中でもよく行くのが、兵庫県加西市にある兵庫県立フラワーセンターだ。ここには日本では初めての食虫植物専用温室があり、その筋では"ゴッドハンド"と崇められる栽培神・土居寛文氏が手がける貴重な植物を見ることができる。関西の植物園はどこも個性が立っているのが魅力だ。

そんな土居さんに先日いただいたのが、このイビセラ(Ibicella lutea)の実。"デビルズクロー"と呼ばれる鋭い鉤爪状の実が地面に落ちると、ヤギなどが踏んで足に突き刺さり歩行不能となったり、誤って食べて内蔵を損傷し、やがて死ぬ。亡骸は腐って養分豊かな土壌となり、そこに種を落としたイビセラが勢いよく芽吹くのだ。

見た目相応の期待を裏切らない凶悪なエピソード。思わず斃れたヤギのシルエットに沿うように茂るイビセラの群生を想像してしまい震える。が、いかにも悪そうなヤツが"最凶"とは限らないというのも世の常。僕自身、本当に血まみれにされた最凶の悪魔の実については、また今度。

 

土居さんと食虫植物の本を作りました。興味のある方はぜひ。
書店イベントなどで悪魔の実も展示する予定です。
<食虫植物ハンドブック>
https://www.facebook.com/carnivorousplantshandbook

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