2014.10.30
キングコング[2]
また久々になじみのおもちゃ屋に行ったんですけど、
ぼくに気づいた店主がマジメな顔して
「ミキジさん、Hのやつ辞めました……」っていうんですよ。
え、どうしたんですかH君?なんかあったんすか?って
心配になったんですけど、わけを聞いたら
「なんかゴリラのTシャツとか作って商売をするとか
言いだして、そんなのうまくいくんですかね?
ミキジさんなんか聞いてました?」

「あっいや……」
しかし、それから数ヶ月がたったころ
H君は資金繰りの為に始めたアルバイトの日々に疲れ果て
オリジナルグッズはほとんど作らずダラダラした生活をつづけ
たまに店に顔を出してはオモチャを買っていく始末。
長年にわたってH君の面倒をみてきた店主は心配になり、
本心を聞こうとH君を店に呼んだそうだ。
「おいH、おまえオリジナルグッズを作るといってた話、
あれ実際はどうなんだ?やりたいことやれてるのか?
オレはおまえが何かに挑戦するといったから
こころよく送りだしたのに今はどうだ?
今日オマエが店に来てオモチャを見る目でおれは確信したよ。
オマエの目はキラキラしてたよ、なあH!
おまえがほんとうにスキなものはなんだ?
おまえが心からスキだ!といえるモノはなんだ?言ってみろ!」
なんと愛にあふれた店主なんだ!
そ、それでH君はなんて言ったんすか?
「オレが本当にスキなもの……」
H君は手にもってたキングコングのソフビをジッと見つめた後
店主のほうを向いてこういったそうだ。
「オッ……パイ…です」
こいつはイチから性根からたたき直さないといけないと店主は
H君の首根っこを捕まえ自分の店で再び出直しさせることを決意したのでした。
H君がまた再びなじみの店にもどってくる。
写真: A.J. Renzi Corp.というプラスチックを取り扱うトイメーカーが81年に製造したドンキーコング(貯金箱)です。ちなみにこれはキャラクターなのでH君的な視点でいうとキングコングではない。